映画感想『ガタカ』

以前インタビューで奈須きのこ先生がお好きな映画に挙げられていた、『ガタカ』を鑑賞しました。
生まれ持った遺伝子により人の優劣が決められる世界で、主人公は他人に成りすまし宇宙飛行士を目指すという話。

※以下ネタバレを含みますので未鑑賞の方はご注意ください。

 

まずこの話の良いところは誰も主人公を裏切らなかったところだと思う。
主人公の嘘を知ったら「この嘘つき野郎!警察に突き出してやる!」なんて人がいてもおかしくないのに、
恋人友人家族同僚その誰もが、彼の嘘を知ってなお、逆境に立ち向かい懸命に生きる彼自身をちゃんと認めてくれたよね。
だからこそ、不適正者としてレッテルを貼られた主人公にとって、おそらく絶望しかなかったであろう地球だけど、この地球を去るのは名残り惜しいと思えるほどに、いつの間にか大切なものが増えていたのかもしれない。

そして海で弟に勝ったシーン。
引き返すことなんて微塵も考えてなかった、前に進むことしか考えなかった、それゆえに主人公は止まらなかったんだろうなぁ。余力を残さない全力の行動だったり後先考えない行動っていうものにはやっぱり測り知れないパワーがある。生まれて初めて自分の可能性が拓けた瞬間とはいかほどのものだろうか…。これはもう家を飛び出してもしょうがないよ。

ラストの結末も救いがありました。
主人公の自分の可能性を信じる強い意志と夢への努力、そして周りの人の協力…それらが不可能を可能に変えたのかな。人が持つ力ってそういうものだよなぁ。

ジェロームが最後に自ら命を絶ったのは、主人公に夢を託したのかなぁと。
宇宙に行ったら死ぬであろう主人公(体力的に生きられないから)と共に死ぬことを選んだとも解釈できるけど…たぶん彼は主人公を信じてると思う。そうじゃないと地球に戻ってきた後の一生分のサンプルを残したりしないよ。ジェロームとして主人公が夢を叶えたのならこの世界に自分がいる必要はない、お前がジェロームを生きてくれ、なんて願いながら、最後にジェローム本人も宇宙に行ったんじゃないかな。宇宙は足で歩く必要はないからね。
それに主人公はきっと、海で弟に勝ったときのように、地球に戻ることなんて微塵も考えてない。だからこそ、絶対止まることなく帰ってくるはず。そんな希望が見えた結末でした。

というわけでじんわり心に染みる良い映画でした!